「相場師一代」 是川銀蔵(著)株で勝つための「是川流投資の三鉄則」

小学館文庫 600円 1999年10月1日(平成11年)
84歳で手にした200億。95歳の最期は裸一貫。 貧しい漁師の子に生まれながら、長者番付1位にまでのぼり詰めた伝説の投資家の壮絶な生涯を、100時間を超える取材から鮮やかに描き出す。
「本当に儲けようと思うなら、自分で経済の動きに注意すること。日本経済はもちろん、世界経済の動向、そしてこれを まずたゆまず日常見守っていく。これはある程度常識さえあれば誰でもできることだ」(本文より)
個人としては破格の数百億円の株取引に成功し「最後の相場師」と称せられた”是銀”が93歳で記した唯一の自伝。
若干16歳で単身満州に渡って商売を始め、朝鮮半島で成功失敗を繰り返す。そして株ー。波乱の生涯と地道な独学の日々から導き出される故人の珠玉の言葉の数々は、バブルが崩壊したいまも、勝負を決する名言である。
目次
まえがき
第一章 ”ほげたをたたいた”人生
  • 「とうとう来るものがきた」
  • 機関投資家
  • 持ち株はすべて売った
  • ブラックマンデー
  • 恐慌はこない
  • 鉄鋼株を買え
  • 鉄鋼不況のイメージが定着していた業界だが
第二章 少年実業家
  • 「いつか必ず天下を」
  • 運命を変えた大戦勃発
  • 一文なしで山東半島を横断
  • 炊事係から主計へ
  • 邪道の金儲けはやるまい
  • 閃いた一厘銭商売
  • 一厘銭輸出禁止
  • ピストル交渉は大成功
  • 三万円寄付のうまい話
  • 死ぬもならず生きるもならず
第三章 好事魔多し
  • 徴兵検査不合格
  • 工場経営を押しつけられる
  • 二十一歳で従業員二百六十人を使う
  • 人間は百年生きられる関東大震災だ、トタン板を買え!
  • 末おそろしい男だな
  • 大恐慌のあおりで会社倒産
  • 貪窮の中の図書館通い
  • 「うちのお父さんは普通の人と違う」
  • 資本主義経済は崩壊せず
第四章 百発百中の先見力
  • 株で勝負したいが元手が・・
  • 百発百中
  • 「先生、事務所ができました」
  • 是川経済研究所
  • アメリカの金本位制停止を読む
  • 億万長者になりそこねる
  • 情報の真偽を見抜く
  • 憲兵隊に国際情勢を講義
  • 第二次世界大戦を予期
第五章 四十にして立つ
  • 朝鮮で鉱山開発と製鉄所設立
  • 小磯国昭朝鮮総督との知遇
  • 入閣要請を断わる
  • 次女の婿探し
  • 実印を十個作れ
  • 「ワシを逮捕したらキミのクビがとぶゾ」
  • 借金の額など知らん
  • 敗戦、財産没収そして逮捕
第六章 二期作実戦
  • マッカーサーは日本人を去勢する気か
  • 二期作は必ず可能だ
  • 農業試験場と気象台通い
  • 研究費用はトタン板再生で捻出
  • 二期作を成功させた人々の温情
第七章 腹八分目
  • カメ三則で株売買を開始
  • 土地で儲けた三億円で「相場に生きる」
  • 日本セメントは上がる!
  • 「わが社の株は値上がりするんでしょか」
  • 「あんたのいうとおりになってきた」
  • もうは、まだなり。まだは、もうなり
  • 腹八分目の手仕舞い
第八章 欲ボケ自滅
  • 次は鉱山株に狙いをつける
  • 同和鉱業の筆頭株主に
  • 連日の棒上げに欲ボケ
  • 売りそびれた六千万株
  • 相場は逆に逆に出るもの
  • カネ儲けして親のかたきを討つ
  • 子どものために是川奨学財団設立
第九章 逆転勝利
  • 菱刈の鉱脈はつながっている!
  • もう一度株をやらせてくれ
  • プロ中のプロが宝の山を否定
  • 買って買って買いまくる
  • ワシが隣接鉱区を買ってやる
  • 相場は一進一退で休戦
  • 半月間で七百七十二円から四百二十円に急落
  • 金鉱脈は隣接鉱区にも延びていた
  • 男の約束は守って当然や
  • 長者番付日本一は努力と精進のたまもの
  • 税金は三十数億円も払っている
  • ”時代を先読みする目”を買え
  • 投資は正々堂々と
  • 不二家株
  • 投資五ヶ条
あとがき
今、読み返しても実に勉強になる書である。
”私が自伝を世に出すことは、大勢の犠牲者を出すことになるという自戒から出版を避けてきたのである。ところが、あるライターが止めるのも聞かず、私の投資一代記なるものを出版してしまった。
私は自らの人生を自らの手で綴ることにより、下部で成功することは不可能に近いという事実を伝える使命があると思い、筆をとることにした。
株を利用して一定の利殖をするということはまったく不可能というわけではない。それは至極真面目に株というものをとり扱い、着実な方法で利殖の材料にすればできないことはないということだ。しかし、株により巨万の富を得、大金持ちになって豊かな生活がしたい、という目的でやったら必ず失敗する。
大勝負師といわれる人は一人の例外もなく、消え去ってしまっている。これが株式投資の世界における勝負師といわれる人間の運命なのである。
巨万の富を得たかに思えた状態も、儲けた分だけすっかり税金で取られてしまう。日本の税制は株で儲けても巨万の富が築けるような仕組みにはなっていない。儲けたら儲けた分だけ税金で取り上げられてしまう仕組みになっている。”
これは、序文のまえがきに記された内容であるが、全てがここに集約されているように思える。株式投資で活躍した人で成功者として名を残すには、株で勝負することをどこかで降り、証券会社を立ち上げている。言葉は悪いがある意味で胴元になった方が着実であることを知っていた。株売買での手数料、そして税金と二重の負荷が重荷となる。
是川氏が92年に没して28年、この本は初版が1999年、今から21年前に刊行されているが、時代が変わった今でも読み直してみるとその新鮮さと株に対する覚悟・心構えを認識させられる。是川氏は私が証券会社に勤務し株売買の営業をしていたころ、よく耳にしていた。当時は短期投資の顧客はその仕手筋の銘柄に躍起になっていた。まだ若手であった私には到底奨められる銘柄ではなかったが、短期売買をしてくれる顧客は手数料収入の売買ノルマをこなせる意味では有難かった。だが、決まってそれで儲かっている顧客は少ないというのかいなっかたように思う。そんな顧客は必ず信用取引で追証となり、顧客のところに集金しに行っていた。株の世界は当時はまだ、博奕的な要素も強く、まして仕手ともなれば決して素人には手を出せるようなものではなかった。また、是川氏の名前は全国的には良く知られ、私のような若造には全く怖い存在でしかなかった。今の時代にも通じるものがあると思えるが、この高速なITの進んだ世界ではどこまで立ち向かえるのかは疑問である。一秒間に何千回と繰り返される場に個人の板読みがどこまで読み取れるのか。それゆえ「最後の相場師」といわれる所以なのであろう。
しかし、この時代の株世界に私がいたことは事実であった。大きなグラフ用紙を買って、日々の罫線を書いたり、データを収集し分析したりと忙しい時代でもあった。電話での場立ちへの売買注文からマークシートでの売買注文に変わったりと機会化の波も激しかった。
さて、この本は是川氏の伝記ではあるが、株売買の極意書でもあろうか。常人には決して真似ができることではないが、教訓としては多いに参考になる。
”「踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決まって手違いになるなり」といわれるように出動の時期が決定的に重要である。その時の値段が、今後の採算の基準になるとともに、心理的な影響が大きいからだ。つまり上下動にともなって評価損益がこの基準値から生まれるわけで、その評価価値が投資家に売買の決心をさせ、行動を起こさせる動機となる。したがって、大勝負に打って出るための、基準値となる出動の時期の選択はきわめて大切な条件となる。”
私の投資手法は、テクニカル的要素が強く、投資成績も結果大成せず収支トントンである。現在株式市況は未曽有の高値であり、コロナウィルス渦、変異のウィルスの脅威・感染拡大がある一方、治療薬の期待、経済においても混沌としたなか実体経済に相反しどう動くのかさえ読めないでいる。そんな中、この本を再読し良かったと思っている。

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