「天国までの百マイル」 浅田次郎(著)心臓を患う母を救うため、奇跡を信じて百マイルを賭ける。親子の切ない情愛、男女の恋物語

朝日文庫 470円 2000年11月1日(平成12年)初版発行

バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男、城所安男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆ける。親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く感動の物語。
目次
天国までの百マイル
物語としては実に単純なストーリーであるが、親子の情愛、男女の情愛を深く描いた作品であった。母への想い、兄姉との確執、別れた妻と子供たちへの想い、そしてどん底の生活の中で出会った女性との愛惜。
貧乏が故に不幸でしか分かり得ないものがあるのも事実であろう。
幸せはお金で買えるが、不幸はお金で買えない。幸福であるが故に必死でその生活を守ろうとする。時にはそれが仇となり他人を巻き込んでしまうのだろう。何も見えなくなるのだろうか。そんなことはないと思うが、それでも日頃よりいつも考えて生活が出来たらと思わせる一冊であった。
文中に印象の残る個所があったので引用する
”親を面倒だと思うくらい自立していた。子どもに厄介になりたいなんて思わないよ、親はー。
どうして豊かだった頃の俺はおふくろのことを考えなくて、貧乏をしてにっちもさっちも行かなくなった今・・・
それが貧乏の有難さというやつさ。金で買えないものがあるってことを、貧乏人は良く知っている。
今のおまえは貧乏だから、金で買えないものを知っている。でもそんなことは、おかあさんの本意じゃない。
貧乏なおまえに助けて欲しくはない。金持ちのおまえに見捨ててほしい・・・”
実に的を得ている言葉である。

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