「ブラック・マネー」 香港を舞台にした為替相場で罠に落ちた男の意地と恋!

牛島治郎(著) 集英社文庫 660円 初版発行1988年3月25日

邦友銀行香港支店のディーリング・ルーム室長・村木は、上司の命令でドル買いに走ったが、たった1日で10億円を失った。円高に揺れ動く世界の為替市場ー
莫大な裏金が利益を求めて激しく動く。そのブラック・マネーをあやつる大財閥の仕掛けた罠と対決する村木。現代社会をヴィビッドにとらえて描く、男の意地とロマン!
目次
敗者への道
黒幕
罠の中から
暴落
どん底の鬼
陰の企業
バイバイ・ゲーム
解説
感想
やはりこの本も再読にはなるがジャンルを経済小説と捉えるべきかハードボイルのロマン小説と捉えるべきか悩むところである。しかし、読みやすく500ページをあっと言う間に読み切ってしまったのだから面白かったのは間違いない。
34年前の初版発行の小説で、舞台は中国返還前の香港から始まる。丁度、その少し前に香港に旅行した頃を思い出す。香港の観光地を訪れ、その表と裏のギャップに驚いたものである。特に印象深かったのは九龍城近くの飲食街に寄ったときの、あのどぶの様な異臭が鼻につき、店頭のガラスケースには大量の蛇がうごめき、それを調理している様や、私たちの食事をしている脇に貧困に窮している子供が来て、じっと立ってみている光景は今でも鮮明に残っている。
話は元に戻して小説のことに触れるが、為替相場を舞台にしているのものの、経済小説にしては単純な構想に終始している。それを考えるとハードボイル小説といった方が的を得ているのだろう。

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